俺の言うとおりにしてください、お嬢様。




エマお嬢様って呼び方も、もう呼ばれる筋合いだってない。

そう呼ばれる度に腹が立つ。


お姉ちゃんと並んでる姿を見て「お似合いね」って、生徒たちみんなが言っているところを聞くと泣きたくなる。



「火傷はすぐに熱感覚を忘れるくらい冷やさなければ駄目なんです」


「いいってばっ」


「エマお嬢様、俺の言うとおりにしてください」


「っ…、」



ほら、ズルい…。

それに逆らえないことを知ってるからって弱味みたいに使って。


すぐに冷やせる身の回りのものを探した男は、グラスに入っていた氷をすくい上げるように手にした。



「っ、!つめたい…、」


「…これくらいしなければ跡が残ってしまいますから」



直に当てられた氷。

冷たい、すっごい冷たい…。

冷たいのに温かくて優しいんだから嫌になるよ…。



「今夜は少し冷えるそうなので、必ずお腹にブランケットをかけて寝てくださいね」


「……」


「ヘアアレンジは自分でやったんですか?」


「……」



そうだよ、自分でやったの。


おじいちゃんに頼むわけにはいかないから、あなたがいつもやってくれていたことを思い出して真似した。

でも破壊神にはやっぱり上手くできなくて、三つ編みだって曲がってるし不恰好。



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