俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
「とても上手にできていますよ、エマお嬢様」
毎朝と放課後の日課も、マンションでの生活も、授業中も。
いつも間違えてハヤセの名前を必ず1回は呼んでしまって、それで悲しくなっての自爆だ。
執事じゃないくせに名前を呼ばないで。
執事じゃないくせにどうして触ってくるの、どうしてそんな目で見てくるの。
「ハヤセ……、」
震える声は小さく小さく呼んでしまった。
すると伏せていた眼差しがわたしを見つけてくれて、それだけで寂しさが少しだけ消えた気がするのに。
それなのに、もっともっと寂しくなる。
「わ、わたしのところに───」
「真冬くん!」
戻ってきて───…。
戻ってきてよ、お姉ちゃんのほうになんか行かないで。
本当はそう言いたい。
「アリサ様、どうかされましたか?」
「もう教室に戻りたいの。食欲がなくて」
「…わかりました。行きましょう」
わたしからスッと離れてしまった手。
その体温が無くなってしまっただけで、何よりの孤独に飲み込まれてしまったような気持ちになる。
行かないでハヤセ、ここに来て。
わたしの執事はあなたしかいないのに…。