俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
最初はすごく痩せ細っていて、今とは比べ物にならない目をしていた。
それは人間を信じていない目。
世界には自分たちしかいないのだと、自分を守れるのは自分だけなんだと。
そんな寂しくて強くて、何よりも弱い目をしていた。
「…どーも」
それは聞こえるはずのない声だ。
聞こえちゃならない声で、聞こえたならば即座に逃げろと全身が危険信号を発動するもの。
「っ───!!」
背中から確かに聞こえて全身に悪寒が迸る中、思わずバッと振り返った。
「久しぶり」
「な、なんで……」
その声はもう2度と聞きたくなかったもの。
幻聴?なんて思ったけど、間違いなく男はわたしを見下ろしている。
「もう金輪際わたしのところに来ないでって言ったよ…!」
「わかってるよ。だからこれ以上は近づかないし触らない、約束する」
そいつは両手を見せて降参の合図。
それすらもわたしを馬鹿にしてるようにも感じるけど、悪意は見えなかった。
それに何よりクロとシロが怯えてもないし、警戒してるわけじゃない。
もし悪い人だったならばすぐに反応してくれる2匹なのだ。