俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
そう言った彼は寂しそうに笑った。
なんだろう、すごく震えているウサギを前にしたような感覚だ…。
平然と振る舞おうとしてるけど、本心はビクビクおどおどしていてわたしに何て言われるか怯えてる。
「ネックレスの弁償はちゃんとするから。
…じゃーね」
本当にわたしに1ミリも触ることなく去ろうとする早乙女 燐。
なにがあったの……?
あいつ、変なキノコでも食べちゃった…?
「ま、待って…!」
ピタリと動きが止まった。
振り返っていいのか迷ってるのだろう、そのまま背中が返事をしてくる。
「な、なんかあったの……?変だよ、すっごく変っ!」
「……初恋なんだよ、俺」
「え……?」
「初めて誰かを好きになったかもしんない。…だからどうしたらいいか分かんないんだって」
え、………え。
ゆっくり振り返った男は、頬をほんのりと赤くさせていて。
「俺を容赦なくひっ叩く女なんて姉さん以外にいないと思ってた」
「ほ、ほんとうなの…?本当に本当に……わたしなんかを…?」
「…私“なんか”ってやめろよ。わりと可愛いよお前」
2人目だ、そう言われたのは2人目。
まさか2人目がこの男になろうとは誰が想像できたんだろう。
なんか色々すごいことになっちゃったんですけど…。