俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
「でもわたし、注ぐことならできます!」
「できていなかったから不合格なのよ。それに、スタ女でお茶を“注ぐ”とはあまり言わないわ」
「わたしっ、お茶注ぐ係なんでっ!おいしいって……言ってくれたから…」
回転寿司。
わたしはあそこのテーブルに付いていた蛇口から、お茶を何度も何度も注いであげていた。
だってわたしが注ぐと美味しいって微笑んでくれた人が目の前にいたから。
わたしはあの瞬間が何よりも楽しかったのに…。
「はい?あなたは何の話をしているの。そんなことを言っている暇があるなら花嫁としての正しい作法を1つでも学びなさい」
「…はい」
ハヤセの顔は見なかった。
どうせ見たってお姉ちゃんを選んだあなたなら忘れちゃってるはずだ。
あの回転寿司もわたしにわざわざ付き合ってくれてたってことだ、心の中では笑ってたのかもしれない。
馬鹿だこいつって。
「エマちゃん、大丈夫よ。また分からないことがあったら私に何でも聞いて?」
「…お姉ちゃん、」
って呼び方も正しくないような気がしてきた。