俺の言うとおりにしてください、お嬢様。




わかんないってなに。

詳しく知りたいのに分かんないって…。


ダイニングテーブルに向き合った執事ではない人と2人きりで食べる食事は、もしかすると初めてかもしれない。

とくに気をつかうこともなくて不自由なく食事が取れた今、マスカットを食べながら聞いてみた。



「叩かれたから好きになったの?」


「…その言い方すると俺って変態みたいじゃん」



まちがってないと思う。

だってわたしに『泣けよ、俺のために』とか言ってきた人だし…。



「でも誰かを好きになるのに理由って一々考える?そんな律儀なことが恋だとは思わないよ俺。気づいたときにはって感じだろ」


「…確かにそうかも」


「あ、やっぱ嘘。なんかこの話やだ。やめよ」


「え、なんで…?」


「それも言いたくないから。自分の胸に聞いてみるがいいよ」



なにそれ。
なんかちょっと小馬鹿にしてる…?

そっちだって恋愛に関しては初心者のくせに。

わたしが初恋ってことなら、今まで本気で好きになった人はいなかったってことだもん。


だから同じレベルだ、こいつとわたしは。



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