俺の言うとおりにしてください、お嬢様。




「じゃあ俺そろそろ帰ろうかな。今日はありがとう、楽しかったよ」


「…こちらこそありがとう」


「またなんかあったら言って。…俺なんかに言いたくないだろうけど」



この人…わたしとちょっと似てる。

わたしに対して『“なんか”って言うな』なんて言ってたけど、今のあなたに同じ言葉を返したい。


素直に今日はすごく助かったし感謝してるんだよ。



「……触ってるけど、」


「…うん」


「大丈夫なの?蕁麻疹とか出ない?」


「…でない」



なぜかわたしは立ち上がって帰る準備をし出したそいつの袖を掴んでいる今。

……なにしてるの、わたし。


けど分かんない。

わかんないけど、あんなに言っちゃってごめんねって謝りたい。



「…明日からの執事ってもう決まってんだっけ?」


「え…?」


「いや、今日のおじいさんの代わりは誰がなるんだろって」


「…決まってない。固定がいない場合は1日1日ローテーションなの」



そうなんだ、と。

早乙女 燐の返事が優しいから余計にきゅっと袖を掴んでしまう…。


ここは前にハヤセもいて早乙女もいて、最悪な一夜があったリビングなのに。



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