俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
きっとわたしが今年いちばんの奇声を発してるはずで。
外で待機してる女子生徒も執事も今頃は怯えてることだ。
それくらいわたしはお姉ちゃんの手をパッと離してまでも無我夢中で走った。
貞子の恐怖から逃げるように、それはもう全力疾走だ。
「むりっ!無理無理っ!!!触っちゃった貞子と手つないじゃったぁぁっ!!怖すぎるぅぅぅうううう!!!」
ここどこ!?
っていうか暗くて全然わかんないっっ!!
なんかもう階段だって転けそうになりながらも降りて、広すぎる洋館を走り続けて。
でも彼女の手を振り離したときに「エマ…!」って呼ばれた甲高い声。
それは確実にお姉ちゃんのものだった。
『エマ!そんな高いところに登ったら危ないわ!降りてきて!』
『だいじょーぶ!へいきっ!』
『怪我したらどうするの!エマ!』
小さな記憶の中で何度も何度も呼んでくれた大好きな声と同じだった。
やっぱりお姉ちゃんはお姉ちゃんだよ…。
───なんて感傷に浸りたいのに浸れない今。
「ここどこぉぉぉ…っ、暗いぃぃっ」
変な倉庫に来ちゃった……。
積まれた机やら椅子やら、ぎゅうぎゅう詰めの狭い場所。