俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
それでもエマは私のことをずっと「お姉ちゃん」と呼んでくれていた。
本当はずっと分かってた。
あの子はそんな子じゃないって、私を嫌いになるような子じゃないって。
だからエマだけは私の妹でいてくれる?
どんなことがあっても、ずっと私の味方でいてくれる?
そんなふうに試したかったのかもしれない。
「それにさ、さっきエマが逃げて行ったとき。お前はすぐに追いかけた早瀬さんじゃなくて、恐怖に走って行った妹を真っ先に心配してただろ」
「エマ」って咄嗟に出ていたこと、それは私も気づいていた。
だってあの子は昔から怖がりなんだもの。
私のベッドにいつもいつも忍び込んで、広いベッドでもくっついて寝てくる。
「エマのこと、嫌いなの?」
「…きらい、よ」
「だったらなんでそんな顔してんだよ」
どんな顔してる…?
私は今、どんな顔をしているの…?
どんな顔であの子の前にこれから立てばいいの。
「なにがあったのかはよく知らないけど、喧嘩してんなら早く和解したほうがラクだよ」
「…許して…くれないわ」
「俺も一緒に謝ってやるから。まぁ、今までのお詫びだと思ってよ」