俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
ううん、ぜったい許してくれるって知ってる。それよりも泣きながら私に抱きついてくると思う。
エマは私のこと、昔から大好きだったもの。
「意地なんか張らず、自分の気持ち、なんでもいいから話してみろよ。
これがしたいあれがしたい、そーいうのでもエマは喜ぶんじゃない?」
本当はファミレスに行ってみたい、回転寿司?ってところにも。
柊財閥の秀才な長女ではなく、“柊 アリサ”でもなく、普通の女子高生のように生きてみたかった。
「エマはアリサのこと、もしかすると早瀬さんより好きだと思うけど。
お前に忘れられたって言ってたときの落ち込み様すごかったもん」
本当はずっとずっとエマのように自由に生きてみたかった。
だけどあの子もあの子でいつも孤独だったことは知っていた。
だからエマにならそういうの言ってみてもいいのかな…。
本当の気持ちを言っても…私のこと、お姉ちゃんって言ってくれるだろうから。
「…知ったふうなこと言わないで。エマをいちばん知ってるのは私なんだから」
「はいはい。それはどーも失礼しました」
たとえどんなにひどいことをされたって、あの子は誰かを恨んだりなんかしない。
それよりも幸せを与えてくれるような、そういう子なの。
───私の自慢の、たった1人の妹だから。