俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
「え、どこかに行くの…?」
「うん、執事は今日で終わりだから帰るんだよ」
え、……え!?
なんかもう荷造りも完了してるし、今にもマンションを出て行く勢いなんですけど…。
まだおじいちゃん退院してないよね……?
それにこんなにも急に辞めてく執事は初めてだよ……?
「えっ、待ってよ早乙女!そしたら辞めてった執事が10人目になっちゃう!!」
「だってこれ、ただの職場体験だし。元気でねエマ」
ええっ!?
まだわたしパンにジャムすら塗ってないよ!?
せめて朝ごはんくらいは食べてからでもいいんじゃないのっっ!!
「俺、早乙女財閥の跡取りだよ?暇じゃないんだって」
うっ……それはすごく存じ上げておりますけども。
だとしてもまた今日からローテーションだなんて…。
それに早乙女は一応はわたしのことが好き……なんじゃないの……?
「エマ、」
すると背中を向けた彼は何かを思い出したかのように荷物を1度置いた。
振り返った表情はスッキリしているような、それでいて優しい顔。
それに何より髪が金髪に戻っている。
「1回だけ抱きしめさせて」