俺の言うとおりにしてください、お嬢様。




「───お呼びですか、エマお嬢様」



ふわっと身体が浮いてお姫様抱っこ。

敵にばかり囲まれていた場所に、誰にも負けないくらい最強な剣と盾がわたしを守りに入った。



「ハヤセっ!あのね、いろいろ大変なの!」


「…エマお嬢様。ここまでなった経緯を教えてください」



おっと……?

もしかしてハヤセまでわたしを叱るつもり?わたしはあなたのお嬢様だよ?



「…猫ちゃんが迷い込んでたから助けて、」


「その猫ちゃんは無事ですか?」


「うん!無事に裏庭のほうに逃がしたよっ」



でも、この人はそうじゃないってこと。

そして彼もまたわたしがそう言うことなんか分かりきってるから。


ホッとしたように微笑みかけて、愛しげに愛しげに見つめくれる。



「さすがは俺のお嬢様ですね」


「…ご褒美、くれる?」


「もちろんです。───…2人きりになったらな」



猫なで声のようなおねだりをしてみると、ヒソッと伝えられる甘い甘い合図。

コクンとうなずいて、首に回す腕にぎゅっと力をこめた。



「とりあえずここは潔く逃げましょう」


「うんっ!」



そのままお姫様を拐う盗賊のように。

やんちゃな子供みたいな顔をしたSランク執事は、この状況を意に介さずにそんなことを言ってしまった。



「おいっ!!君はSランク執事だろう!!これだから柊 エマが関わるとろくなことがないんだっ!!疫病神めっ!!」



< 335 / 340 >

この作品をシェア

pagetop