俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
「───お呼びですか、エマお嬢様」
ふわっと身体が浮いてお姫様抱っこ。
敵にばかり囲まれていた場所に、誰にも負けないくらい最強な剣と盾がわたしを守りに入った。
「ハヤセっ!あのね、いろいろ大変なの!」
「…エマお嬢様。ここまでなった経緯を教えてください」
おっと……?
もしかしてハヤセまでわたしを叱るつもり?わたしはあなたのお嬢様だよ?
「…猫ちゃんが迷い込んでたから助けて、」
「その猫ちゃんは無事ですか?」
「うん!無事に裏庭のほうに逃がしたよっ」
でも、この人はそうじゃないってこと。
そして彼もまたわたしがそう言うことなんか分かりきってるから。
ホッとしたように微笑みかけて、愛しげに愛しげに見つめくれる。
「さすがは俺のお嬢様ですね」
「…ご褒美、くれる?」
「もちろんです。───…2人きりになったらな」
猫なで声のようなおねだりをしてみると、ヒソッと伝えられる甘い甘い合図。
コクンとうなずいて、首に回す腕にぎゅっと力をこめた。
「とりあえずここは潔く逃げましょう」
「うんっ!」
そのままお姫様を拐う盗賊のように。
やんちゃな子供みたいな顔をしたSランク執事は、この状況を意に介さずにそんなことを言ってしまった。
「おいっ!!君はSランク執事だろう!!これだから柊 エマが関わるとろくなことがないんだっ!!疫病神めっ!!」