俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
「さてお嬢様、そろそろ学校へ向かいましょう」
「あっ!ちょっと待って!」
「どうかされたのですか?」
聖スタリーナ女学院は庭園も揃えられていて、水場もあって、中庭は季節の花を感じられる花園。
室内にだってたくさんの施設が設けられている。
けれどわたしが向かった場所は、マンションから学校へ向かう途中にある小さな裏庭。
「あれ?今日はいない…。どこかに行っちゃってるのかなぁ」
「…猫、ですか?」
「うん。いつも2匹いるんだけどね」
こうしてキャットフードを持参して、朝と帰りに必ず向かっている日課。
でも今日は2匹のクロとシロは留守にしてるみたいだ。
黒い猫と白い猫、だからクロとシロ。
ハヤセ以上に単純な名前をわたしは勝手に名付けていた。
「でもここに入れておけば食べると思うからっ!」
風に飛ばされない重さの小皿もわたしが用意したものだった。
そこにキャットフードを入れて、もう1つには新しい水を注いであげる。
「お優しいのですね、エマお嬢様は」
「えへへ、そうー?…でも動物のほうが優しいよ」