俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
「エマお嬢様、汗を拭かせていただきますね」
わたしが反応するよりも先に、手にしたタオルで拭ってくれる。
その力加減だって完璧。
そして毎朝セットしてくれる髪も崩さぬようにパーフェクト。
「ハヤセ、わたしドリブルできたよっ!」
「ええ、見ておりました。ただ1つだけアドバイスが許されるなら、
ボールは足のつま先ではなく腹で蹴るとコントロールが上手くできますよ」
「えっ、そうなの!?やってみる!」
……って、お嬢様方のやる気は0だ。
どこにやる気スイッチあるの。
なんかもうお喋り始めちゃってるし、紅茶なんか飲んでピクニックかっての。
「それと小まめに水分補給も取りましょうねお嬢様」
「ううん、まだいい」
いらないっ、と示すと困ったように微笑む専属執事。
それはやっぱり今まで辞めていった執事とはちがう、嫌悪感のないものだ。
むしろそんなわたしを好評価してくれているもので。
「エマお嬢様、このハチミツレモンドリンクは俺の手作りなんです。だから今もお嬢様に飲んで欲しい俺のエゴです」
「なんと!それは飲むよ…!飲むっ!」