俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
「やめるなら今ですよ?」
と、言いつつもハヤセはジャケットを脱いでベスト姿になった。
そんな姿に観客と化している女子たちはキャーキャーと騒ぎ出す。
「えっ、やる!本気でこーーいっ!!」
「わかりました。さぁ行きましょう」
試合にはならなくとも、2人いればパスやPK戦ができる。
それにハヤセの顔も嫌々応えてくれてるわけでもなさそうで、どこか楽しそう。
「待ってました」と、そんな顔だ。
「エマお嬢様、中々スピードありますね」
「でしょ!?脚力は自信あってね!ほらいつも走ってるから!!」
「…あぁ、なるほど」
そう、花瓶を割って走ったり。
学院長のカツラを取って追いかけられて走ったり。
校内に迷い込んだ猫を抱っこして、先生にバレそうになって走ったり。
「ならお嬢様は、体育の成績は誰よりも良いということですね」
「……確かに!!」
すごい、発想の転換だ。
ハヤセはわたしを喜ばせる天才かもしれない。成績が良いだなんて、初めて誰かに言われた。