俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
「───すべてはこの四つ葉のクローバーをくれた女の子のおかげなんです」
「…その子には今も会ってるの?」
「はい。…やっと会えました」
「わぁ、よかったねぇ!」
キーホルダーを見つめていた眼差しは、ふっとわたしに移った。
初めてハヤセのそんな顔を見るかもしれない。
完全無欠ではなく人間味を感じる顔は、親近感すら持てる。
「エマお嬢様、あなたは今のままで十分です。あなたにしかないものは俺がいちばん知っていますから」
まだ数日だ。
こうして関わって数日なのに、その言葉だけで元気が戻ってくるから不思議。
「…破壊神でも…?」
「はい」
「問題児でも…?」
「はい」
キーホルダーをしまった彼は、そのままわたしの手に触れた。
今だってしっかりと目線を合わせてくれる。顔を見つめてくれる。
「だから花嫁になんかなれなくたっていい、ならなくていい。そのときは俺が───」
「……え…?」
「…いえ、エマお嬢様は今のままで何よりも素敵だということです」