俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
ええいっ!ここはもうやるしかないっ!!
袖を掴むだけじゃなく、腕を絡ませるようにして背の高い執事を見上げた。
「いきたい!」
「俺の名前を呼んで、同じように言ってください」
名前……?なんで……?
でも言うとおりにしなきゃ、ずっと憧れていたファミレスが経験できなくなっちゃう。
ハヤセの名前は確か……
「ま、マフユ……おねがい、わたしすごくいきたいの……っ」
「───…まさか下の名前を呼んでくれるとは」
少し驚きながら、それはもう満足そうに微笑んだ男。
「合格です」と、一言。
「えっ、わっ!」
そのまま手が離れないように逆に掴まれて、端から見れば手を繋いでいる状態だ。
そして初めての場所へ腕を引かれるように入って行く───途中。
「ねぇ、あの彼氏Sすぎない?言わせちゃう系だね」
「でもすっごい格好いいから羨ましい~~!!」
そんな若い女の子たちの声が聞こえた。
もちろんわたしたちのことを言っていて、でも間違っていることは1つ。
確かにSランク執事だからSっていうのは正解だけど、彼氏じゃない。