俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
そんなのクラスメイトが見たら悲鳴を上げそうだ。
いつもいつもそれぞれ一定の距離感を空けて、広すぎる教室での生活だから。
でもわたしには逆に今のほうがすごく楽しくて、ワクワクが止まらない。
「ねぇあのイケメン、なんか大変そうな子連れてて可哀想じゃない?」
「ドリンクバーすら知らないみたいよ?少し知的障害とか持ってるのかな?あの女の子」
「なんていうか子供~」
クスクス聞こえる。
それは逆にこの距離感だからこそ、だ。
もしかしたらどちらにせよ一長一短なのかもしれないと。
思わずはしゃぎすぎた自分が恥ずかしくなった。
「…わたし、やっぱり帰る、」
「エマお嬢様、実は俺もドリンクバーは初めてなんです」
少し大きな声で言ったハヤセ。
まるで周りの女の子たちに聞こえるように。
「俺も昔から世間知らずなところがありますから。いまも本当は飛び跳ねたいんですよ?」
「えっ、そうなの…?わたしと同じ…?」
「はい。聖スタリーナ女学院にはそんなものございませんからね」