俺の言うとおりにしてください、お嬢様。




「見てっ!これぜんぶ混ぜたらどうなるのかな!?」


「…エマお嬢様、それはやめておきましょう。きっと凄まじい味になります」


「あははっ、飲めなかったらハヤセが飲むんだもんね。わたし炭酸にするっ」



並んで立ったドリンクバー前。

けれど今だって他とは違うオーラが出ていること。


ハヤセはわたしを守るように斜めうしろに立って、周りに不審な者がいないかを常にチェックしている。

そうしながらも交わされる温かな会話。



「ハヤセは何にしたの?」


「温かい緑茶です」


「えっ、それでいいの?和だねっ!」


「はい。俺は数年間イタリアに住んでいたので、未だに日本茶が恋しくなるんです」



向かい合った席は違和感なかった。

それもそうだ、だってマンションでの食事はいつもこうして一緒に食べているから。


もちろんわたしとハヤセだけの秘密。



「エマお嬢様、生クリームがついていますよ」


「えっ、右?それとも左?」



パフェを頬張るわたしの向かい側に座ったハヤセは、ドリンクバーだけを楽しんでいた。

ペロッ、ペロッと舌を出すわたしを見ているだけで十分らしいのだ。



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