俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
わかってない、こーいうところは全然わかってくれないSランクめ…。
かわいいって言われたかった。
なに、ライフセーバーって。
格好いいって……あなたに言われましてもだ。
「ありがとっ!!サイズぴったりなの!!動きやすいよすごく…!!」
拗ねるようにハヤセにぶつけた感謝。
ちょっとだけ嫌味も込めてるんだからね。
周りなんか胸なんか寄せちゃって谷間なんか見せびらかして。
お嬢様なんだからもっとおしとやかにしなさいって、わたしが言えない台詞を思う今日。
「きゃっ!ちょっとぉ、顔に飛ばさないで!メイク取れちゃうじゃないっ」
「ねぇウォータースライダー行きましょ?」
「向こうにトロピカルジュースが用意されてるわ!」
……なにこれ。
ぜんぜん水泳の授業なんかじゃない。
100メートルとか泳がないの?
水泳ってそーいうものじゃないの…?
水面から顔を出したわたしの先、はしゃぐ女の子たち。
キラキラしてる…それはもうキラキラなお嬢様たちだ。
「エマお嬢様、新記録ですよ」
「……つまんない」
「え?」
わたしだけだもん、こんなに真面目に泳いでるの。
それに真面目にストップウォッチを操作してるのだってハヤセだけだ。