俺の言うとおりにしてください、お嬢様。




「つまんないっ、わたしもビキニが良かった!!ハヤセのバカっ!」


「…俺は似合っていると思います、その水着も」


「っ…、そうじゃない、なんか色々ちがうの、もういいもん…」



新記録なんか当たり前だ。
体育だけなのだ、得意なのは。

でもそれだって前は先生を怒らせちゃって、…そしてなぜか今日は不在だし。


どうやらとりあえず花嫁的な作法が完璧ならばそれでいいらしい。

だから体育はおまけみたいなものなんだって。



「どうしてわたしの水着はこれなの?こーいう授業内容だって分かってたはずでしょっ!ハヤセなら!」


「…だからじゃないですか」


「え…?」



広すぎる室内プールの脇に体育座り。

そんなわたしの前、丁寧にしゃがんでくる執事。



「だから、なんです。本当は長袖タイプにしたかったくらいなんですから俺」



まるでタンクトップ型から覗く腕を隠すように、肩からふわっとタオルがかけられた。



「もっと自覚してください、エマお嬢様」


「自覚…?」


「…ほら、今だってそうです」



彼が前にしゃがむことで、わたしの視界は遮られた。

だから周りからもわたしの存在は隠れてしまってる。



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