俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
「実は俺とアリサ様は───」
「きゃぁぁ…!!だれかっ、助けて……っ」
そんなときだった。
ハヤセが何かを言いかけた声を消すように、その背後から女子生徒の悲鳴。
それはいちばん深さのあるプールからの声。
「溺れちゃってる…!!わたし行ってくる…!!」
「エマお嬢様…!」
彼女はハワイから取り寄せたという水着を嬉しそうに見せびらかしていた、九条 理沙(くじょう りさ)というクラスメイトだった。
The・嫌味ったらしいお嬢様って感じだから、わたしは正直苦手だった。
というかわたしが言うのも変だけど、関わりたくなかった1人で。
でも溺れてるんだからそんなの言ってられないっ!!
「できるだけ足動かして!!犬かきでも何でもいいから…!」
「うぶ…っ、たすけて…っ、」
ザブンッと、躊躇いなくプールへ飛び込んだわたし。
こんなの本当にライフセーバーだ…。
というか執事は何してんの!!
「す、すみません理沙お嬢様……!自分、実はカナヅチなんです…!!」
どうにも泳げない執事らしいのだ。
あいつはCランクあたりだろう。