俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
そんなハヤセは戸惑っていたカナヅチである執事の首根っこを掴むように、プールへ放り投げた。
そして追いかけるように一緒に向かってくる。
「掴まってくださいエマお嬢様」
「わたしはいいから九条さんをっ」
「彼女はあいつにどうにかさせます」
あいつって……、少しうしろで溺れかけてる執事のことだよね…?
いや絶対ムリだよっっ!!
共倒れだよ、2人セットで溺れちゃう未来しか見えない…っ!
と、そんな情けない執事を見たお嬢様は響く声を上げた。
「碇(いかり)…!なにしてるの早く来なさい……!!」
「り、理沙お嬢様…っ」
「来なかったらクビよ……!?」
「それはぜったい嫌です……!!」
それが専属執事にとって何よりのやる気スイッチらしい。
バシャバシャと、それはもう泳げていない中でも必死にクロールをして向かってきた。
これがきっとお嬢様と執事の絆というものなのかなって。
「わっ、肌…っ、」
それよりも大変なことがある。
わたしを水中で抱えるハヤセは上半身裸、それにわたしだって水着姿。
ピタッとくっつく肌と肌。
筋肉……すごくない……?
それにハヤセって肌の色も白いんだ…。