俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
執事とお嬢様の絆
「では21ページの3行目、和訳してもらおうか。───柊、」
どうしようかな、ここは寝たふり?
それとも具合が悪いふり?
うーーん、今日は前者でいこう。
「エマお嬢様、」
甘く優しい声がヒソヒソと。
「……」
「エマお嬢様、先生から当てられていますよ」
うん、わかってる。
わかってるからこそ察しておくれよSランク執事……!!
1人1人背もたれの付いた柔らかい椅子に丸い机、その横に必ず立っているそれぞれの執事。
それが聖スタリーナ女学院の当たり前の座学風景だった。
「柊?寝たふりなんていい度胸じゃないか」
うわわわわっ!!
当たり前だけどバレてる……!!
そりゃ入学してから毎回この言い訳で逃れてるんだから仕方ないとしても…っ!
「いえ、エマお嬢様は寝ておりません。今の間にしっかりと翻訳していました」
「ん?そうなのか?ならできるな?」
もうハヤセ……!!
そんな適当なこと言って余計に不利にしないでってばぁっ。
わかるわけないよフランス語なんかっっ!
───と、そんなわたしの手元に1枚のメモ用紙がふわっと渡された。