俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
「の、ノートルダム大聖堂は…聖母マリアに捧げられた教会堂である…、ノートルダムはフランス語で“私達の貴婦人”という……意味である、」
読み上げただけだ。
そこに綺麗に並べられた字を、そして難しい漢字にはふりがなまでふってある字を。
わたしはただそのとおりに音読しただけなのです。
「よし、正解。柊にしては上出来じゃないか」
の、乗りきった……。
やったぁ乗りきったっ!!
どうにも問題はないみたいで、先生もそのまま授業をつづける流れだ。
「やったねハヤセ!正解だって!」
「ハキハキとしっかり読み上げられておりましたね、エマお嬢様」
「本当!?滑舌とか大丈夫だった!?」
「はい。ちゃんと聞き取れましたよ」
主旨ちがくね?
そんなツッコミは受け付けていない。
いいのだ、伝われば。
わたし自身はもちろん何の訳をしたのかすら不明だとしても。
それでも乗りきった、ため息吐かれなかった、授業をストップさせなかった。
それだけがわたしにとって何よりも嬉しいこと。
「こら柊!授業中は席を立つな!」
「あっ、はいっ!」