俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
それはもうウサギだ、バッタだ。
ぴょんぴょん跳ねる生き物なら何だって今のわたしに当てはまる。
そしてそんなわたしに優しく笑いかけてくれる、甘くてイケメンな専属執事。
「お嬢様、こちらは借方と貸方の計算と記入も必要になるかと」
「えっ、これじゃだめなの…?」
「これは複式簿記なので、エマお嬢様のやり方だと単式簿記となってしまうんです」
「ふくしきぼっきってなに…?」
「…複式簿記です」
あれ、なんかクラスメイトの顔が真っ赤になっちゃったんですけど…。
他の執事も心なしか笑いをこらえてるような…。
そんな簿記の授業は地獄オブ地獄。
計算なんかできないわたしにさせていいことじゃない。
「ふっ、複式ぼっき……、」
「おいっ、お嬢様方の授業中だぞ…!」
「悪い…、くくっ、」
おい、聞こえてるぞ下級執事ども。
クスクスこらえきれてないの知ってるんだからねっ。
もっと隠してよ、だからBランク止まりなんだよお前らみんな。
お嬢様たちだってそう、馬鹿ね~なんて心の中で笑ってるの知ってる。