俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
「うわぁっ!!いててててっ!!」
───だけどハヤセは至って普通に嘘をついた。
荷物を下ろして隙が出た男の懐に入るように、腕を取って拘束固め。
ギリギリと力を加えているのだろう、男は情けなくも今にも泣き出しそうで。
「ハヤセっ!もっと懲らしめていいよっ!」
「はい。かしこまりました」
思わずわたしも背負ったリュックのショルダーストラップをぎゅうっと握った。
「は、話が違うじゃねぇか……っ!!痛ぇっ!いででででっ…!」
「エマお嬢様の命令なんでな。それにお前、盗難だけじゃねえだろ」
「っ、な、なんだ急に…!!」
「正直に言わねえなら言わせるまでだが」
ぎゃあぁぁぁぁーーーっと。
それはもう痛々しい音と一緒に男の悲鳴が平和だった噴水前に響いて。
うわぁ……容赦ない。
というよりハヤセがいつものハヤセじゃない…。それが素のハヤセなの…?
「わぁっ!これ盗撮だよ…!まって!わたしのも撮ってる……!!」
呆気なく自白した男は、ポケットに入っていた写真をバサバサと地面に落とした。