ブラッド★プリンス〜吸血鬼と女神の秘密〜
 うつむいたとき、胸元に下げているネックレスが虹色に輝いていることに気付く。

 そうだ、これはラアナがくれた命の水。

「これが必要になったのは、ルキくんの方だったね」

 小瓶のふたを取り、(しずく)をルキくんの唇へ落とした。

「守ってくれて嬉しかったよ。ありがとう」

 一粒の涙がぽとんと流れて、おでこや頬の傷が薄れはじめる。

 ひどかった背中の傷も、消えてなくなった。

 ルキくんは、助かる。あとはーー。

 となりに横たわっている剣を手にして、ゆったりと立ち上がる。

 食事の並んだテーブルの上で闘うドラレス伯爵に見えるようにして、自らの胸あたりに剣の先を向けた。

貴様(きさま)、何を……!」

「ルキくん、好きだったよ」

 あとは、最後のひとおしだけ。
 痛くて、苦しくて、ぽたぽたと真っ赤な血が(したた)り落ちていく。


「ーージュリ!」

 みんなの叫ぶ声が、もうろうとした意識の中で聞こえた。
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