ブラッド★プリンス〜吸血鬼と女神の秘密〜

さよなら、プリンス

 どれくらい眠っていたのだろう。
 真っ暗な世界に、突然光が差し込んだようなまぶしさを感じて目が覚めた。

 飛び起きたところは、見覚えのある部屋のベッド。

 私、生きてるの?

「……っ」
 頭や胸に、にぶい痛みが走る。

 よく覚えてないけれど、なんだかとても長い夢を見ていたような気がする。

 切なさがあふれながらも、心地よい温もりに包まれている。
 胸がいっぱいで、言葉にならない。

 リビングへ向かうと、おばあちゃんが朝食の準備をしていた。懐かしい匂いに誘われるように、お姉ちゃんも降りてくる。

 テーブルにレモネードとハニートーストが出て来ると、声を弾ませて。

「うわっ、見て! スペシャルブレイクファーストだ! ほら、樹里も食べてみなよ」

 つまみ食いするお姉ちゃんと、それを微笑ましそうに見ているおばあちゃん。

 いつも通りの2人に、思わず涙があふれてくる。

「お姉ちゃん、大好き」

 抱きつく私にたじろぎながら、お姉ちゃんがケラケラ笑う。

「急にどうしたー? ああ、わかった。新しい学校が不安なんでしょ。初日が肝心(かんじん)だもんねー」

 すぐ体を離して目を丸くする。

 新しい学校? 初日?

 もう何日も通っているのに、その言葉はあまりに不自然だった。
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