ブラッド★プリンス〜吸血鬼と女神の秘密〜
「俺は……イリヤ。この恩は忘れないよ」
「だ、だめだよ? 絶対あきらめないで! 家近くだから、救急車呼んで来るから待ってて!」
夢中で走りながら、家へと向かう。
手遅れになる前に、私がなんとかしなければ。
この道は、ほとんど車は通らない。あまり人にも合わない。
森の前で倒れていたから、もしかして動物に襲われたのかもしれない。
『あの丘にある森には、悪魔が住んでる』
頭を過ぎる話をかき消して、ただひたすらに足を急がせた。
家の近くまで来たところで、息を切らしながら立ち止まる。久しぶりの全力疾走で、足がもげそうだ。
呼吸を整えて、ふと来た道を振り返る。
あれ……? 目を凝らして、足を一歩前へ進めた。
いない。
森の辺りを見渡すけど、誰もいない。
イリヤと名乗った男の子は、風のように跡形もなく消えていた。
あれほどの怪我をしていて、自力で歩けるはずがないのに。
「イリヤ……くん?」
冷たい風が、ほてる体を包み込む。幻覚でも見ていたのだろうか。
とつぜん、握りしめているスマホの電源が入った。
腕に残るたしかな感触。薄っすら付いている血のあと。
ーーイリヤくんは、幻なんかじゃない。
「だ、だめだよ? 絶対あきらめないで! 家近くだから、救急車呼んで来るから待ってて!」
夢中で走りながら、家へと向かう。
手遅れになる前に、私がなんとかしなければ。
この道は、ほとんど車は通らない。あまり人にも合わない。
森の前で倒れていたから、もしかして動物に襲われたのかもしれない。
『あの丘にある森には、悪魔が住んでる』
頭を過ぎる話をかき消して、ただひたすらに足を急がせた。
家の近くまで来たところで、息を切らしながら立ち止まる。久しぶりの全力疾走で、足がもげそうだ。
呼吸を整えて、ふと来た道を振り返る。
あれ……? 目を凝らして、足を一歩前へ進めた。
いない。
森の辺りを見渡すけど、誰もいない。
イリヤと名乗った男の子は、風のように跡形もなく消えていた。
あれほどの怪我をしていて、自力で歩けるはずがないのに。
「イリヤ……くん?」
冷たい風が、ほてる体を包み込む。幻覚でも見ていたのだろうか。
とつぜん、握りしめているスマホの電源が入った。
腕に残るたしかな感触。薄っすら付いている血のあと。
ーーイリヤくんは、幻なんかじゃない。