ブラッド★プリンス〜吸血鬼と女神の秘密〜
 通り過ぎざま、琥珀(こはく)色の瞳がギロリとこちらを見た。一瞬のことなのに、心臓がドクドクと波打っている。

 なに、これ? まるで自分の体じゃないみたいに、胸の音だけが耳に響く。

「ねえねえ、今の人見た?」
「えっ、ああ……うん。あれ誰?」
「初めて見たかも。黒羽兄弟以外に、あんなイケメンいたんだぁ。うちも捨てたもんじゃないねー」

 学校の生徒なのに、優希ちゃんが知らない?

 この白川学園は、主に白川村の生徒しか通っていない。隔離された区域と言っても、それなりの人数はいるから、知らなくても不自然ではない。

 でも、なんだか引っ掛かる。
 たいていの人は、中学校も同じだと聞いていたから。


「そうそう、あの話には続きがあってさ」

 思い出したように、優希ちゃんが口を開く。

「村以外の土地から人が来ると、新たな血を嗅ぎ付けて、深い眠りから目を覚ますらしい。悪魔が村人を狩に降りて来るんだって。ガオーって」

 わざとらしく声色を低くして、神妙な表情を見せた。
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