ブラッド★プリンス〜吸血鬼と女神の秘密〜
 チリチリとウェーブのかかった髪の少女が、黙ったままこちらを見ていた。
 目つきは鋭くて、まるで獲物をにらみつける狼のよう。

「何しに来た?」

 ルキくんの問いかけにも、微動だにしない。

 この子、なんだろう?

「誰だ、そいつは」

 氷のように冷たい声。感情がないような話し方。

 ルキくんは、私を背中へと隠して一歩前へ出る。

「俺のクラスメイト。仲間だよ」
「ナカマ……」

 そうつぶやいたとき、敵意を示していた目が少しだけゆるんだ。その表情は、まだあどけない幼さがあって、中学生くらいの女の子に見える。

 何も言わずに、その子は草むらの中へと消えて行った。

 一瞬だけ、ルキくんを見る目が切なくなったように感じたのは、思い過ごしだったのかな。

 ぐいぐいっと腕を揺らすと、ルキくんが少し戸惑った顔をした。

「あの子はミーナと言って、この前知り合った。うちとは昔から……犬猿の仲の部族だ」
「……ぶぞく?」

 聞き慣れない単語に首をかしげる。

「宗教……みたいな意味合いだよ。先祖代々から、あそことは……仲が悪い」

 あまり詳しくは話したくなさそうに、また目をそらされた。

 ルキくんはそう言うけど、さっきの子のルキくんを見る目……あれは、きっと。

「とりあえず、家入って」

 そのまま流されるように、私は屋敷へと誘導された。

 少しだけ、ほんの少しだけだから。疑問よりも、そんな自分の好奇心が(まさ)ってしまった。
< 44 / 158 >

この作品をシェア

pagetop