ブラッド★プリンス〜吸血鬼と女神の秘密〜
「失礼致します」
スカートの中にタオルが入ったと思ったら、汚れた部分に霧吹きをして、出てきた歯ブラシでトントン叩き始める。
その手さばきは、まるで主人に仕える執事。
ものの十秒ほどで、もうシミが落ちてきている。すごい……と感心しながら、ハッと気づく。
ひざまづかせて、影楼先生に何をさせているのか。
「あっ、ありがとうございます! でも、自分で出来ますからッ!」
慌てて立ち上がった拍子に、テーブルに置いてあったティーカップが倒れて、残りの紅茶が影楼先生の頭を直撃した。
ポタポタと、きれいな黒髪から水滴がたれている。
「うわぁぁ、すみませんっ!」
「……大丈夫ですよ」
動揺することなく、微笑みながらタオルで髪を拭く仕草は大人だ。
「どんくさ」
頬杖を付いたルキくんが、バカにするように鼻で笑った。
あきらかに上からの態度。こうなったのも、誰のせいだと思ってるのよ。
「あんたみたいな人間、初めて」
「なんとでも言えばいいよ。お騒がせしました!」
リビングを出て行く影楼先生へ続いて、私もかばんを持って飛び出した。
早くここを出なくては、いろんな意味で危ない気がする!
ローファーのかかとを踏みながら、玄関のノブに手を掛けた。が、動かない。
あれ、おかしいな?
右、左へ回しても開かない。ガチャガチャと力尽くでやるけど、あ、開かない……。
「そもそも、このドア鍵なくない?! どうなってるの、これ?」
古びた屋敷だから、カチッと回すロックもなければノブに鍵穴すらない。なのに押しても引いても開かないなんて、どうやって鍵が掛かっているというの?
完全に、鍵のない屋敷に閉じ込められた。
スカートの中にタオルが入ったと思ったら、汚れた部分に霧吹きをして、出てきた歯ブラシでトントン叩き始める。
その手さばきは、まるで主人に仕える執事。
ものの十秒ほどで、もうシミが落ちてきている。すごい……と感心しながら、ハッと気づく。
ひざまづかせて、影楼先生に何をさせているのか。
「あっ、ありがとうございます! でも、自分で出来ますからッ!」
慌てて立ち上がった拍子に、テーブルに置いてあったティーカップが倒れて、残りの紅茶が影楼先生の頭を直撃した。
ポタポタと、きれいな黒髪から水滴がたれている。
「うわぁぁ、すみませんっ!」
「……大丈夫ですよ」
動揺することなく、微笑みながらタオルで髪を拭く仕草は大人だ。
「どんくさ」
頬杖を付いたルキくんが、バカにするように鼻で笑った。
あきらかに上からの態度。こうなったのも、誰のせいだと思ってるのよ。
「あんたみたいな人間、初めて」
「なんとでも言えばいいよ。お騒がせしました!」
リビングを出て行く影楼先生へ続いて、私もかばんを持って飛び出した。
早くここを出なくては、いろんな意味で危ない気がする!
ローファーのかかとを踏みながら、玄関のノブに手を掛けた。が、動かない。
あれ、おかしいな?
右、左へ回しても開かない。ガチャガチャと力尽くでやるけど、あ、開かない……。
「そもそも、このドア鍵なくない?! どうなってるの、これ?」
古びた屋敷だから、カチッと回すロックもなければノブに鍵穴すらない。なのに押しても引いても開かないなんて、どうやって鍵が掛かっているというの?
完全に、鍵のない屋敷に閉じ込められた。