ブラッド★プリンス〜吸血鬼と女神の秘密〜
「無理だよ。もう出られない」

 うろたえていると、背後から首に腕を回されて、そのまま中へと引っ張られる。

「まっ、待って? ルキくんって、そんな強引な人なの?!」

 もっと人に関心がなくて、去るもの追わずのあっさりしたイメージだった。

 腕を引き離そうとしたり、じたばた動いてみる。けれど、どんな抵抗も虚しく、ひょいっと抱き上げられて、階段を上がったところの部屋へ連れられた。

 そのままソファーに降ろされて、暴れようとするけど簡単に押さえ込まれる。

 な、なにこの状況!

「ちょっ、す、ストップーッ!」

 ルキくんの腕を思い切り押し上げると、丸い目をして見下ろされた。

「なんだよ?」
「あの、まず……情報の整理をさせてくれない? どうして、泊まらなきゃいけないのか……とかいろいろ」

 言いながら、よみがえる光景。なめられた傷と、消えた跡。頬に触れて、やっと思い出した。

「そうだ、怪我! ノエルくんの、あれどうなってるの? いきなり噛まないって言ってた!」

 思い過ごしなんかじゃない。さっきの鍵も変だった。ルキくんたちは、なにか隠してる。

 徐々に整った顔が近いてきて、身動きが取れなくなった。

「……ありえないんだけど」

 ため息を吐きつつ、じっと私の顔を見ている。

 それはこっちのセリフだからぁ!
 わけのわからないことで振り回されて……。

「なんで思い出しちゃったの? すごく面倒なんだが。この際、カゲに任せるか……でもな」

「……何、言ってるの?」
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