ブラッド★プリンス〜吸血鬼と女神の秘密〜
「……ジュリ?」

 背後から声がして、振り返ると暗闇に何か光が見えた。

「イリヤくん? どうして、ここに?」

 草村の中から現れたのは、イリヤくん。驚いたけど、見慣れた顔にホッと胸を撫で下ろした。

「いつも突然現れるね」
「いつもジュリを見てるから」

 冗談を言って、場を和ませてくれる。
 ほんとうは1人になって心細かったから、イリヤくんがいてくれて良かった。

 あたたかい雫が頬を流れていく。
 泣くつもりなんてなかったのに、いろんな不安や思いが積み重なって、たえられなかった。

 気付かれないように顔を下げて、サッと涙を拭う。

「ジュリを泣かせる奴は、オレが許さない」

 肩を抱き寄せられて、ゆっくり顔を上げる。

 イリヤくんの視線を追うと、窓からこちらを見ているルキくんがいた。
 すぐにカーテンは閉められて、姿は消えてしまったけど。

「家まで送るよ」


 いばらに囲まれた屋敷を離れて、しばらく経つ。ずるずると鼻をすすりながら、ごしごしと目を擦る。

 こんなカッコ悪いところ、見せたくなかったのにな。
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