ブラッド★プリンス〜吸血鬼と女神の秘密〜
 いつになく険しい表情をするイリヤくんが、身構えながらルキくんに向けて。

「どういうわけだ? ここはオレたちの居住区だ」
「今から、そいつにそれを聞く」
「話の通じる相手なのか?」
「分からない」

 2人がなにを言っているのか理解は出来ない。でも、とても恐ろしいことが起こっていることだけは、たしかだ。

「ディモラム氏族が、ここになんの用だ?」
「あんた達に迷惑かけないさ。その子に用があるんだよ」

 真っ赤な唇がキュリリと笑い、まるで幽霊が飛ぶようになめらかに、体は動かずゆっくりと近付いて来た。

 あまりの恐怖に、声も出ない。

「その子に指一本触れさせない」

 殺人鬼を遮るようにして私の前に立つと、ルキくんは少しためらう顔をした。

若輩(じゃくはい)がいい度胸だねぇ。200年以上生きてるこちに勝てるとでも思うのかい?」

 またヒヒヒと不敵な笑い声を出して、真紅の色をした長い爪をペロリと舐めた。

 な、なんなのこの人。それに、200年って……?
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