ブラッド★プリンス〜吸血鬼と女神の秘密〜
「ヤツは変化(へんげ)血術(ちじゅつ)を使っている。彼女は末森さんじゃない」

 駆け寄って来たルキくんが、私をかばうようにして、何かを考えるように瞳を閉じる。

「さあ、おいで」

 〝優希ちゃん〟が手をかざすと、(うず)を巻くように風が集まり始めた。まるで竜巻きみたいだ。

 近くの草木が根こそぎもぎ取られて、どんどん巻き込まれていく。

 少しずつ体が引き寄せられる。足の踏ん張りが効かなくて、ルキくんから引き離されそうになった。

 すごい力。
 この状況では、影の力が上手く使えないらしい。もうだめ、吸い込まれる!


「おやめなさい」

 空から声が降るように響き渡って、竜巻きの風波が止まった。

 草村の方からヒシヒシと歩く音がしてくる。目の前に誰かの足が目に入る。ゆっくり視線を上げて、息をのむ。

 ほどよい肉付きの体型、ひとつ結びした髪に赤いメガネ。

「三上……先生? どうして、ここに」

 開いた口がふさがらないでいると、となりに来たイリヤくんが乱れた髪を直しながら言う。

「オレが呼んだ」

 いつの間に……、というか2人は知り合いなの?
 頭の中がビックリマークとハテナで埋め尽くされている。
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