ブラッド★プリンス〜吸血鬼と女神の秘密〜
 斜めに(かたむ)いた三角の屋根に、木で作られた小屋の入り口を進む。

 テーブルとイス、棚に物がちらほらある程度で、中は閑散としている。
 丸いテーブルを囲んで、私たちは腰を下ろした。

同族喰(どうぞくく)らいと言って、吸血鬼の血を飲む集団がおる。それは決まって自分より目上の存在、濃い血を持つ者が襲われるんじゃ」

 白魔女と呼ばれていた三上先生は、話しながら何かを探すように、細長い指を左右に動かしている。

「あの、まず、先に、この状況を説明してもらって……いいかな?」

 びくびくしながら口を挟むと、いっせいに視線がこっちへ集中して、ごくりと(つば)を飲んだ。

「えっと、イリヤくんが狼の子孫で、ルキくんが……吸血鬼。それから……」
「わしは白魔女のモラナじゃ」
「三上先生とは、関係ないんですか?」
「それもわしじゃ。まあ、数ある顔の1つじゃよ」

 モラナがクイッと人差し指を動かすと、私の背後から何やらゴトゴトと動く音がした。

 顔のすぐ真横を何かがビュンと飛んでいって、となりに座るルキくんの肩に「ひッ!」と寄りかかる。

「おお、これはおいしそうなプラムじゃ。食べて良いかの」

 待ちきれないと言わんばかりの声。
 返事を聞くつもりはないようで、赤いジャムが詰まったビンの蓋をパカッと開けてすぐ、細長い指をぐさりと突っ込んだ。
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