ブラッド★プリンス〜吸血鬼と女神の秘密〜
 べっとりと真っ赤に染まった指を、モラナが丁寧に舐める。

「よくお前さんを見張っていたが、何度か追い払われたわ。うん、これは初恋のような味じゃな」

 満足そうに反対の指をクイクイと回すと、ビンの蓋が浮いてガチャガチャと閉まった。

 ……うわぁ、すごい。物が自由自在に動いてる。
 物語で読んだことはあったけど、魔法使いってほんとうに存在するんだ。

 パチンと頬を叩いてみるけど、やっぱり痛い。夢じゃない。

 ルキくんが吸血鬼ってことも、イリヤくんが狼だってことも。さっき襲われかけたことも全て、現実で起きていることなんだ。

「モラナは、いろんな動物に変身することが出来る。ねずみやカラス、時にはヘビにも」

 ……カラス?

 あることを思い出した。
 よくカラスに見られていると感じていたけど、あれはモラナが見守ってくれていたんだ。

 ルキくんやイリヤくんにも助けてもらって、それなのに私は……。

 モラナを見ていると、胸の奥が締め付けられる。
 みんなの正体を知る前とは、同じではいられないんだ。
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