ブラッド★プリンス〜吸血鬼と女神の秘密〜
「ノエル、そのくらいにしておけ」

 どこからかレイ先輩が現れて、ノエルくんの手を掴む。
 指から離れた唇には、赤い血がにじんでいた。

「お前が中毒になるぞ」

 ちぇっとふてくされた顔をして、ノエルくんが手の甲で唇を拭く。

 その姿を見て、あらためて吸血鬼なんだと思い知った。

「ここは吸血鬼の街、パラムシアだ。仲間も多いが敵もいる。人間界(むこう)と違って、吸血行為は禁忌ではない。くれぐれも気を付けることだな」

 パラム……シア? 吸血鬼の街?! 敵がいる? 情報が多すぎて、頭がついていかない。

 混乱しているうち、目の前にドサッと靴が投げられた。

「まずは、それを()いた方がいいようだ。拾い物だが」
「えっ、ちょっと……!」

「ジュリちゃんの血、おいしかったよー! また味見させてね」

 ノエルくんの肩を抱いてマントを広げると、2人は一瞬にしていなくなった。
 うそ……、消えちゃった。
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