あやかし戦記　裏側の世界へようこそ
まだ六人もの人が何かに襲われている、そう思うとイヅナの体は止まらなかった。

「すみません、この方をお医者様に診せてください！」

そうレオナードの両親に言うと、イヅナは山の中に走っていく。「イヅナ！！」と言いながら、レオナードとヴィンセントも走ってきた。

「イヅナ、大人でもあんな大怪我を負わされてるんだ。危険だよ」

「ヴィンセントの言う通りだぞ。俺たちにできることなんて何もねぇだろ」

二人が走りながらイヅナに言う。しかし、イヅナの気持ちは決して変わらなかった。

「怪我をしていて動けない人がいる、その人たちを見捨てるなんてできないわ！」

怪我をしながらも逃げてきた男性は、化け物に襲われたのだと言っていた。しかし、それはきっと恐怖で熊などの獣がそう見えてしまった。そうイヅナは考えていたのだ。

（熊なら、おじいちゃんに教わった撃退法で何とかなるもの）

そう考えていたのだが、フルール族がテントを張っている場所に着くと、その考えは間違いで、青年が見たものは真実だということをイヅナは嫌というほど知る。
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