あやかし戦記 裏側の世界へようこそ

もう少し花を見ていたかった、と思いつつイヅナは立ち上がる。上を見上げれば、雲一つない快晴で、どこかに出かけるにはぴったりの天気だ。

「いいキャンプ日和だわ」

そう笑うイヅナに対し、母親は「また暑くなるのは困るわね」とため息をつく。

リビングに入ると、すでに木造のテーブルには朝食が並べられていた。焼き魚に豆腐、野菜たっぷりの味噌汁などこの国ではあまり見かけないものがテーブルには並んでいる。

「わあ、久しぶりの東洋の食事ね！」

「お父さんからのリクエストよ。まあ、当の本人はジョギングに出かけて帰ってきてないけど」

椅子に座って食べ始めるイヅナに対し、母が苦笑する。西洋生まれのイヅナだが、彼女の父は東洋出身で所謂ハーフというやつである。父はたまに母に東洋の食事を作ってほしいと頼み、母はそのたびに世界中の食材を取り扱っている専門店へ買い出しに出かけるのだ。

「イヅナ、お味噌汁お代わりする？」

「お願いします！」