あやかし戦記 裏側の世界へようこそ
「三人とも健康で肉も食ってる。若いし、さぞかしうまい肉なんだろうね」

「早く食べたい。もう食べていいよね、母さん」

「待て。年長者であるワシが先じゃ!」

女性の鬼や子どもの鬼、さらには年老いた鬼までもが舌なめずりをして近付いてくる。レオナードが「来るな!」と言いながら足元に落ちている石を投げつけてみたものの、状況は何一つ変わらない。

彼らのようにただの肉の塊にされてしまうのか、今度は恐怖が込み上げてくる。その時だった。

どこからか銃声が聞こえた刹那、年老いた鬼や子どもの鬼が悲鳴を上げて倒れる。どうやら鬼たちは何者かに心臓を撃ち抜かれたようだ。人間だったら即死である。しかし、年老いた鬼と子どもの鬼の血はすぐに止まり、また立ち上がった。

「あそこからだ!あそこの木の上に誰かいる!」

子どもの鬼が指を指す方をイヅナたちも見た。高い木の上の枝に誰かが二丁の拳銃を構えて立っている。金髪を束ね、青い目をし、缶の刺繍が施されたブラウンのコートにパンツを履き、黄色の蝶ネクタイを結んで翼をモチーフにしたバッジをつけた男性だ。

男性がまた銃を発砲すると、今度は女性の鬼が倒れた。また心臓を撃ち抜かれるが、「あのガキ!」と悪態を吐きながら女性の鬼は立ち上がる。
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