あやかし戦記 裏側の世界へようこそ
アレンの隣にいるチターゼ入って相変わらず何も話さない。でも、その目に怒りがあることはわかった。

二人がいなくなった後、呆然とするイヅナに対してヴィンセントが申し訳なさそうに言う。

「イヅナ、アレス騎士団の人たちに「妖を救いたいと思ったから」とか「妖と共存したいから」とか言わない方がいい。……アレス騎士団に入ろうとしている人は、きっとみんな妖を憎んでいる」

出発した頃とは比べ物にならないほど、空気が重くなった。



列車が駅に到着し、駅を出ると、レオナードの言った通り黒い大きな車が駅前に止まっていた。中から初老と思われる男性が出てきて、ペコリと頭を下げる。

「皆さんをお迎えに上がりました。エーデルシュタイン家の専属運転手、セバスチャンです」

全員の荷物は車のトランクに詰められ、イヅナたちは車に乗せられる。セバスチャンにこの街の歴史などを教えてもらいながら、車は試験が行われるエーデルシュタイン本家に向かっていた。

山道を進むこと四十分ほど、目の前に現れた屋敷にイヅナたちは驚いてしまう。
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