あやかし戦記 裏側の世界へようこそ

「ツヤさん、ごめんなさい。痛いですよね？本当にごめんなさい。最終試験とはいえ、私……！」

イヅナはツヤに駆け寄り、何度も謝る。痛々しい傷を見ていられず、涙があふれた。しかし、その涙を優しく拭う指があった。ツヤの細い指だ。

「……そんな顔をするな。やっと入団できたんだぞ？よく頑張ったな」

ツヤが優しく微笑む。ツヤのそんな顔を見るのは初めてで、イヅナの胸に今度は嬉しさが込み上げてくる。ようやく、妖との共存のスタートラインに立てたのだ。涙が引っ込んでいく。気が付けば、イヅナはレオナードたちに取り囲まれていた。

「イヅナさん、おめでとう！」とアレン。

「頑張ったな！」とレオナード。

「まさか薙刀を投げるなんて、思ってもなかったよ」とヴィンセント。

観客席からは、チターゼが驚いた様子でイヅナを見ている。イヅナが合格するとは思っていなかったのだろう。

イヅナ、レオナード、ヴィンセント、チターゼ、アレン。この五人が、アレス騎士団の新しく入団し、世界を密かに守る人間となった。