忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜
再会
都心から電車で十五分ほど。高級住宅地と名高いその土地に、一棟のそれはそれは煌びやかな建物がある。
【二階堂総合病院】
名前だけ聞けば、よくある普通の総合病院のように思えてしまうそこは、今とても話題になっている病院だ。
おそらく、初めてここに足を踏み入れた人物は皆、口を揃えてこう言うだろう。
"ここはホテルかお城か何かか?"と。
中が見えないようになっている厳かな雰囲気の外観。そのエントランスの向こうには柔らかな光が差し込む広いロビー。その向こうにあるレセプションにはきっちりと髪を束ねた容姿端麗な女性が二人。
右には大きなエレベーターが三機。左には面会用の通用口。そこにいる初老の男性は、どこぞのコンシェルジュのよう。
天井にはシャンデリアが輝き、静かなピアノのクラシックが流れている。
とても病院とは思えないここは、所謂"VIP御用達"の総合病院だ。
政財界の重要人物や大物芸能人、さらには世界的に名の知れた大企業の重役などを主な顧客としており、そのVIPのプライバシーを守るべく、万全のセキュリティーが敷かれているのが最大の強みだ。
お見舞いに行けるのは事前に患者が許可した人か、近親者の中でも限られた人だけだと言うから驚きだ。
そんなVIP御用達、いや、VIP専用と言ってもいいかもしれない病院の中を、私は恐る恐る突き進む。
外は夏の日差しが肌を焼くようにジリジリと強く照りつけていたけれど、ここは程良く冷房が効いていて一気に汗が引く。
思わずため息のような息を吐くけれど、ここにお見舞いに来たわけでもないし、まして患者でもない。もちろんVIPなわけがない私は、この空間に存在していること自体が場違いなのはわかっている。
しかし、呼ばれてしまったのだから仕方ないじゃないか。
きょろきょろと辺りを見回して、自分のスマートフォンとロビーを見比べている私。おそらく大分怪しく見えているのだろう。
レセプションから出てきた女性の一人が、私の元へ歩いてきた。
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