忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜
食事が終わると、静かな空気が流れた。
食事中は美味しさに顔を綻ばせているだけだったものの、改めて考えると今の状況の可笑しさに、目眩がしそうだ。
食後に出されたお茶を少しずつ飲んでいるものの、緊張からかどこかそわそわしてしまう。
「そもそも俺、お前とはあの日会ったっきりだったから、お前のことよく知らねぇんだよな」
私も、天音さんのことは全然知らない。
じっと見つめていると、天音さんは不意にこちらを向いた。
「唯香、歳は?」
「二十五です」
「ふーん、俺は三十五」
「傑くんと同い年なんですか?」
「そう。俺と傑は大学の同期」
「なるほど……」
大学の同期で、今は二人とも二階堂総合病院のドクターだなんて。
そもそも、二階堂総合病院は患者層の関係で一流の腕を持つドクターしか雇っていないと聞いたことがある。
傑くんはアメリカに渡って向こうでも医師免許を取得して、数々の難病患者さんを救ってきた迷うことなきエリート医師だ。
その同僚なわけだから、気が付かなかっただけでもしかして、この人もかなりのエリートなのでは……!?
「あ、天音さん……は、そういえば何科のお医者様なんですか?」
「俺?俺は外科。だから傑とは院内ではさほど関わりが無いかな。カンファレンスで会うくらいだ」
「そうなんだ……」
外科なんて、明らかにエリート中のエリートじゃないか……!
それ以上は私の頭が処理しきれなくなりそうだったため、院内の話は聞かなかった。