忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜
三年前の一夜
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───遡ること三年前。
当時まだ大学四年生だった私はすでに今の会社への内定をもらっていたため、ニューヨークでの挙式の招待状が届いた際にすぐに出席で返事を出していた。
季節は秋。
「就活終わったんだし髪染めて来れば良かった」
黒髪に戻したままのロングヘア。セットしてもらったけれど、どうせならもうちょっと柔らかい色にしてくるべきだったと少し気持ちは落ち込んでいた。
会場はニューヨークのマンハッタンから傑くんが手配してくれたタクシーで一時間ほど。
森の中に建つそこは、築百年以上経つ本物のお城を改造したホテルだ。
周りが紅葉した木々に囲まれていて、とても幻想的。
髪色で落ち込んでいた気持ちは、すぐに上向きに戻った。
その建物の中にはドイツの家具職人が手掛けた家具が置かれている。
温かみと優雅さを兼ね備えた内装は、そこにいるだけで自分自身がセレブやお姫様になったと錯覚させるような素晴らしい空間だった。
アットホームな式がしたいという梨香子さんの強い希望により親族とそれに準ずる人のみが招待されたため、私と同年代の招待客はほぼいない。
しかし素敵な空間と綺麗なドレス姿の梨香子さんを見ているだけで、そんなことは気にならなかった。