忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜
「お前、部屋どこ?」
「二〇七号室」
「マジかよ。俺の向かいじゃん」
「へぇ……」
すっかり酔ってしまっていた私は、相槌すら適当になる。
「ここももう閉まるって言うし、……俺の部屋で飲み直さねぇ?」
普段なら、名前も知らない初対面の男からそんな風に誘われたところで、絶対についていかない。
なのに、この日に限っては。
潰れてはいないものの、今までにないくらい酔っていた私は、頭が全く働いていなかった。
「ん、わかった」
頷いた私に、天音は一瞬驚いた顔をした。
もしかしたら、冗談のつもりだったのかもしれない。まさか私が頷くなんて思っていなかったのだろう。
「お前、意味わかって言ってる?」
そんな伺いにも、
「うん。わかってる」
なんて、知ったかぶりして適当に返事をした。