忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜
「汚いわよ」
「……ごめん」
おしぼりを口元に当てて弁解する。
「何を勘違いしてるのか知らないけど、あれはデートじゃないから。ただの食事だから」
「何子どもみたいなこと言ってんの。年頃の男女が一緒に食事をすることを世間一般では"デート"って言うのよ」
「……」
ぐうの音も出ない言葉に、私は文字通り何も言えずに口を噤むことしかできなかった。
「唯香にそんな浮いた話滅多に無かったから、私今すっごいにやけそう」
「それ本人に言う?」
「だって面白いじゃない。自分の色恋話には全く興味無いけど、唯香の話なら別だわ。すごい楽しみにしてるね」
「……続報に期待はしないで」
「めちゃくちゃ期待してる!進展あったら逐一報告してね!」
「……はい」
侑芽は自分が恋愛と無縁の生活をしているからか、知り合いのそういう話が大好物だ。
今までは私にもそんな浮いた話が無かったから話題にも登らなかっただけで。
侑芽はとても楽しそうにパスタを口に運んでは「おいしい」と満足そうに呟いていた。